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経験豊富な弁護士集団による相続問題のための法律相談は中村・安藤法律事務所

1 金融資産とは異なる困難性

不動産を多くお持ちの不動産オーナーの相続の場合、金融資産を多く有している方とは異なる特有の問題が起きます。
金融資産は当たり前ですが、相続分に応じて細かく按分することは容易です。しかし、不動産の場合には中々そうはいきません。不動産の価値を適正に評価したうえでそれを誰か一人が相続した上で他者が金融資産を多くもらうとか他者に金銭を支払う(代償金の支払い)といったことが一般的です。

また、収益性が高い不動産の場合、複数名の相続人が相続を希望することもあり得ます。その調整も難しい問題が起きます。居住用不動産の場合は、仮に相続発生後も誰かが生活している場合にはその人が相続することとなるのが一般的です(裁判所もそのように認めるのが一般的です。)。
しかし、収益不動産の場合には複数名が取得を希望した場合には誰に取得させるか、ということは難しい判断となります。複数名による共有での相続という方もあり得ますが稀有と言えるでしょう。

この様に不動産を複数有する方の相続にはなかなか難しい問題があります。

2 不動産の評価の困難性

⑴ 居住用の不動産の場合

居住用不動産の評価はあまり難しくないともいえるでしょう。即ち、居住用の不動産の場合、①路線価を1.2倍から1.4倍程度かけた額➁近隣の公示価格の額③近隣の売買事例、などを参考に決められます。これらを総合的に組み合わせて評価をするのが一般的です。なお、あくまで相続税の評価とは異なることとなります。

⑵ 収益不動産の場合

これに対して他者に賃貸している収益不動産の場合には、前述の①・②・③に加え、賃料収入額という視点が大きく入ります。都心の中心部であり新築物件であれば、年間賃料の総額を例えば、4%程度で割引くという評価になる場合があります。4%で割り引くという事は年間賃料を25倍した額となります。

この評価に際しては、年間で発生する管理料は考慮に入れません。例えば、月額賃料収入が50万円の場合は年間賃料が600万円となり、これを4%で割り引くと25倍するということとなり、結果1億5000万円との評価となります。)。他方、都心の郊外や地方都市の場合には6%で割り引いたり(年間賃料を17倍します。)、8%や10%で割り引くという形になります。この割引率の算出(即ち、収益不動産の評価額を年間賃料の何倍にするか)がなかなか難しいと言えます。

⑶ 不動産を所有しているのが資産管理会社の場合

不動産オーナーの方が資産管理会社を作り、オーナーが当該会社の100%の株式を有した上で、その収益不動産を資産管理会社の所有とした場合にはどうなるでしょうか?不動産オーナーが亡くなった場合には、その会社の株式が相続の対象となり、その株価の算定が問題となりうるでしょう。
相続税評価においては比較的容易に非上場株式も評価されますが、前述のとおり遺産分割の場合、相続税の評価とは異なりますので注意が必要となります。

資産管理会社は、一般的にはあまり従業員もおらず、会社としての実態は他の会社に比較すると若干形骸化しているという要素があります。多くの会社の場合の株価評価は、①会社の純資産額、➁配当額、③毎年のキャッシュインの額、④将来価値、などを参考にして決められますが、資産管理会社の株価評価の場合には比較的、①の純資産額を基準とするという考えが取られています。

不動産オーナーの方が当該資産管理会社の株式を100パーセント有している場合は前述のような考えが比較的とりやすくなりますが、過半数を超える程度しか有さない、或いは、過半数を有していない、というような場合には更に複雑となります。この場合には前述の②毎年の配当額や③キャッシュフロー額という要素が大きくなるでしょう。なかなか難しい問題となっていきます。

3 分割しにくいが故の問題

(1) 家族間で誰がどの不動産を相続するか揉めやすい。

金融資産と異なり、当該不動産をきれいに法定相続分で分割することは困難ですので、結果的には、1人の人が特定の不動産を全て相続するという形が一般的でしょう(その場合、その人は他者に代償金を払います。)。しかし、将来性を見込んで金銭でもらうよりも当該不動産そのものを取得することを希望する人が複数出る場合も十分にあり得ます。この場合はいよいよ紛糾しやすくなります。

居住用不動産の場合は複数の人が取得を希望しても、誰がそこを利用し、生活するのが一番公平で合理的か、という視点で裁判所は判断します。これに対して収益不動産の場合は一般的には誰が取得するのが公平かという視点はあまり無いので、ここが難しい問題となるでしょう。

(2) 賃料収入を按分するべく収益不動産を共有とする方法

理想は1人の人が当該収益不動産を相続することでしょう。これが一番将来的には揉めませんし、すっきりしていきます。もっとも、収益不動産の場合、居住用不動産と異なり実際に占有したり、生活するという要素が無く、賃料収入を得るという点に着目すると賃料収入を按分するべく、収益不動産を共有で相続すると言うことも一応破産者あり得るでしょう。

但し、売却をしたり、修繕をする、というような場面が将来的には出うるので一応問題はありうる遺産分割でしょう。

(3) 収益不動産を売却して金銭化する方法

収益不動産の評価や分割方法で揉めた場合(誰が取得するか揉めた場合)には、なるべく高額で第三者に売却し、その上で売買代金を法定相続分で按分する、という方法もあります。ある意味評価の問題も起きず、公平・合理的に処理できる面はありますが、相続人が皆、売却に合意する必要がありますし、なんと言っても当該収益不動産を完全に手放すこととなるので一概に非常に有効な方法であるとはいえないでしょう。

以上の点から、どれか1つの有効な方法があるというわけでは無く、幾つかの方法や評価を組み合わせて解決をしていくこととなるでしょう。

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