メニュー

経験豊富な弁護士集団による相続問題のための法律相談は中村・安藤法律事務所

財産の使い込み

相続財産である預金を、特定の相続人が、使い込んでいる場合があります。特に同居の相続人が、被相続人の家計を管理している場合には起こりうる問題です。また、実際には使い込みなどをしていないにも関わらず、不当に「使い込んだ」と疑われることも少なからずあります。

相続の開始前に引き出しされた場合

引き出しが相続の開始前になされていた場合、引き出された預金の使途が問題となるでしょう。被相続人が高齢となり、認知症が進んでいるような場合であれば、どうしても同居の相続人なりがその預金を管理し、必要な資金を支出せざるを得ないという状況が起きます。使途が被相続人の為に使われている場合(被相続人の医療費や被相続人所有の不動産の税金の為の使用、或いは施設に入居している場合の入居費用など)は問題とならないでしょう。他方、その使途について合理的な説明が出来ない場合にはどうしても、管理していた相続人が取得した、と認定されることとなり、後の遺産分割などではこの点を考慮に入れて判断される(即ち、その相続人の取り分が減る)こととなるでしょう。

相続の開始後に引き出しされた場合

引き出しが相続の開始後であれば、預金は法定相続人が相続分に応じて相続するので、それを超えて利得した分について、過分に取得していることとなり、結局、その後行われる遺産分割の協議において過分で取得した分だけ、少ない遺産分割での取り分となるでしょう。
もっともその使途も問題となります。
使途が相続人全員の為のものである場合(葬儀代、初七日の為の費用、墓石代等)には、問題となりにくいでしょう。他方、これらのための費用ではなく専ら当該相続人のために使用された場合には前述の様に遺産分割の協議において過分で取得した分だけ、少ない遺産分割での取り分となるでしょう。
なお、この場合には理屈上は不当利得返還請求や不法行為請求も出来ますが、実際にこの様に処理されることは滅多になく、後日行われる遺産分割において、過分の分を加味して協議されるのが実際です。

Nippon Rinsho Vol 69, Suppl 8 2011
表1 Functional Assessment Staging(FAST)
FAST
Stage
臨床診断 期間 臨床的特徵 臨床症状の解説,詳細,具体例
1 正常 50年 主観的および客観的機能低下は認められない 5-10年前と比較して職業上あるいは社会生活上,主観的および客観的にも機能低下はない.
2 年齢相応 15年 主観的な機能低下はあるが,客観的な機能低下は認められない 名前や物の場所を忘れたり,約束を思いだせないことがある .
主観的な機能低下は,親しい友人や同僚にも通常は気がつかれない.職業上あるいは社会生活上の複雑な機能は障害されない.
3 境界状態 7年 職業上あるいは社会生活上の複雑な任務に支障をきたしうる十分大きな客観的機能低下を認める 生涯で初めて重要な約束を忘れてしまう.初めての場所への旅行のような複雑な作業を行う場合には機能低下が明らかになるが,買い物や家計の管理あるいは行き慣れた場所への旅行など日常行っている作業をするうえでは支障はない.要求を求められるような職業的あるいは社会的環境から退いてしまうこともあるが,退いた後の障害は明らかではないかもしれない.
4 軽度のAD 2年 日常生活上の複雑な任務に支障をきたす 客を適切に招待できず,半分の人をパーティーの日の翌日に招待してしまう.買い物で必要なものを必要な量だけ買うことが できない.誰かが管理しないと,勘定の計算を正しく行うことができず,重大な間違いを起こすことがある.自分で衣服を選 んで着たり,入浴したり,行き慣れた場所へ行ったりすることはできるため,介護なしで社会生活ができるが,単身で生活し,自分で家賃を支払っている場合,家賃の額を尋ねられると,低く答えてしまう.
5 中等度のAD 18カ月 適切な衣服を選ぶというような日常生活上の基本的な任務が行えない 日常生活を自立して行えず,介護が必要となる.介護者が家計や買い物の手助けをする必要があるし,季節と場所に合った衣服を選んであげる必要がある.いったん適切な衣服を選んでもらえれば,自分で適切に着ることができる.定期的な入浴を忘れることもあり,入浴に説得が必要なこともあるが,自分で適切に入浴でき,湯の調節もできる.自動車の運転が困難となり, 不適切にスピードを上げ下げしたり,信号を無視したりする. 運転中,人生で初めて他の自動車に衝突してしまう患者もいる.叫び声を上げたり,過活動性や睡眠障害のような感情障害によ り,しばしば危機的状況となり,医師の介入が必要になる.
6a やや高度のAD 5カ月 不適切な着衣 寝巻の上に普段着を重ねて着てしまう.靴紐が結べなかったり, 靴を履くときに左右を間違えてしまう .
b 5カ月 入浴を一人で行えない 湯の調節や浴槽への出入りができにくくなり,体も適切に洗えなくなる.入浴後, 体を完全に乾かすことができなくなる.このような入浴の障害に先行して,風呂への恐怖や抵抗がみられることがある.
c 5カ月 用便を一人で行えない 用便後,水を流すのを忘れたり,きちんと拭くのを忘れる. 用便後,下着やズボンを戻すのが困難となる.
d 4カ月 尿失禁 この段階の特徴である尿失禁は時に(c)の段階で起こるが,(c)より2から数カ月後のことが多い.この時期の尿失禁は尿路感染や泌尿生殖器系の障害なく起こるものであり,適切な用便を行う際の認知機能低下に起因する.
e 10カ月 便失禁 便失禁は(c)や(d) の段階でみられることもあるが,この時期に認められることがより多い.便失禁は尿失禁と同様に,用便に対する認知機能低下により起こる.焦燥や明らかな精神病様症状のためにしばしば危機的状況を生じ,医療施設を受診することになる,暴力的行為や失禁のために,家族は施設入所させることを考えるようになる.多くの患者が幻覚妄想状態になるこ とがある.
7a 高度のAD 12カ月 語彙が最大限6語となる ADの進行とともに,語案の減少と会話能力の低下は進む. Stage 4と5の段階で,無口になったり,会話が少なくなったりすることはしばしば認められ,Stage 6では,完全な文章を話す能力が次第に低下する.失禁がみられるようになると,会話は単語あるいは短いフレーズに限られ,語彙は2,3語になっ してしまう.
b 18カ月 理解できる語彙がただ1つの単語となる AD 患者が最後に使用する単語は様々であり,患者により”はい”であったり,“いいえ”であったりする.すべての応答が“はい”であったり,“はい”という言葉が肯定と否定の両方の意思を示すために使われることもある.病気が進行するにつれて, 最後の1単語も使用しなくなるが,何カ月後に,突如その最後の1単語をはっきりしゃべることもある.最後の1単語も使用しなくなると,ぶつぶつ意味不明のことを言ったり,大声を出すだけになる.
c 12カ月 歩行能力の喪失 AD では比較的早期から歩行障害が出現することがあるが,それは認知能力の障害によるもので,例えば,歩行の速さが速すぎたり遅すぎたりすることはまれではない.Stage6では,歩行がゆっくりになったり,小刻み歩行をとったりし,階段の昇降に介助を要するようになる.Stage7の歩行障害は認知能力の障害でなく,恐らく大脳皮質運動野の破壊に起因する.このstageの歩行障害の出現時期は多少様々である.単純にゆっく りとした小刻みな歩行が進行する場合や,歩行時に前方,後方あるいは側方に体が傾くこともある.体をくねらして歩行をすることもある.

ページトップ