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経験豊富な弁護士集団による相続問題のための法律相談は中村・安藤法律事務所

Q.共有物分割請求訴訟を起こすにはどうしたらよいか?

A ① 他の共有持ち分者との間で協議が整わず、どうしようも無い場合、②他の共有持ち分者の所在が不明な場合、などには共有物分割請求訴訟を裁判所に提起せざるを得ないこととなります。

Q 訴え提起に他の共有持ち分者の同意は必要か?

 他の共有持ち分者の同意無くして、自分だけの判断で共有物分割請求訴訟を提起することが出来ます。

Q 訴える際には、一部の共有持ち分者のみを訴えることでも良いか?それとも全員を訴える必要があるでしょうか?

 殆ど多くの訴訟においては、訴える相手・被告を選択することが認められています。もっとも、共有物分割請求訴訟においては例外的に、他の共有持ち分者全員を訴える必要があります。

Q 所在の不明な人がいる場合には共有物分割請求訴訟は提起できるのでしょうか?

 住所をできるだけ調査して、それでも不明な場合にはその旨を裁判所にきちんと説明すれば裁判を提起していくことが出来ます(公示送達といいます。)。まずは住所不明者の最後の住所地を住民票などで調査し、そこを訪問などして調査して、報告書を裁判所に提出することとなるでしょう。

Q 認知症となっている共有持ち分者がいる場合には共有物分割請求訴訟は提起できるのでしょうか?

 他の共有持ち分者がぼけてしまっている場合でもその程度によっては裁判を提起することは出来ます。もっとも認知症が進んでしまい、裁判の意味を理解することができない様な場合には親族が家庭裁判所に成年後見の申し立てをすることとなります(共有持ち分者は一般的には相続がらみであり、親族同士のことが多いでしょう。)。もっとも、成年後見の申し立ては医師の診断書も必要であり、手間も費用もかかりますので、慎重さが必要でしょう。即ち、軽度の認知症の場合には成年後見の申し立てをするか否かは慎重な見極めが必要となるでしょう。重度な認知症の場合には速やかに成年後見の申し立てをするべきでしょう。

Q 共有物分割請求訴訟において裁判所はどのような判断をするのでしょうか?

 まずは、共有者の希望や意見を聞きます。その上で、現物分割,換価分割,全面的価格賠償などの判断をしていきます。
どれを裁判所が選択するかは、裁判所の裁量に任せられていますが、各人の希望やこれまでの経緯や公平性や各人の資力などを総合的に考慮して判断されます。

Q 共有物の分割方法の1つである、現物分割とはどういうものでしょうか?

 現物分割とは、共有不動産を共有持ち分割合に応じて物理的に分ける方法です(厳密には、面積割合に応じた按分分割というよりも、取得する土地の評価額に応じた按分となるでしょう。)。
この結果、共有であった土地は共有者の数だけに分割され、全てが単独取得となります。ある意味もっともすっきりした方法でしょう。もっとも、土地が共有者同士でうまく物理的に分けられる様な形状であれば問題ないでしょうが、実際には道路付けや方角などでうまく分けることが困難となります。例えば、共有者間で、「自分は南側の土地がほしい。」・「自分は奥まった土地(旗竿地)は嫌だ」などと主張し合い合意できない場合にはとり得ない方法です。
また、土地の場合はこのように共有者の数だけに物理的に分割できえますが、土地によってはあまりに狭小となり財産的価値を失ってしまうこともあり得ます。また、建物の場合には物理的に持ち分に応じた分割が出来ないため、採用できない方法となります。
平成8年の最高裁判所の判決以前は、現物分割がまずは優先的に採用されうる方法でしたが、平成8年の最高裁判所の判決以降は、全面的価格賠償が優先されるようになっていきました。

Q 共有物の分割方法の1つである、換価分割とはどういうものでしょうか?

 共有不動産を第三者に売却し、その売却代金を持ち分割合に応じて分配することとなります。
第三者に対して、共有者全員の合意があれば競売を使わずに売却(任意売却)ができますが、それが出来ない場合には裁判所は、競売による売却を命じることが出来ます。競売による売却の場合は1年弱程度時間がかかるのと、一般による売却(任意売却)よりも30パーセント程度廉価になると言われています。
競売の場合は、①競落人は買い受け後に、仮に物件に問題があっても担保責任を追及できない、②図面を入手できないし内見も出来ない、③引き渡しが難航しうる、などから25%から35%程度は安くなると言われています。

また、競売の申し立てを共有者の1人が実際に行い、その申し立て費用を一旦は納付する必要があります(競落された後に、この申し立て費用は戻ってきます。)。
競売による売却は出来ることであれば避けたいところです。
裁判所もこのような視点の元、できるだけ換価分割は避けて判断していく方向にあります。
なお、競売には共有持ち分者も入札することが出来ます。

Q 共有物の分割方法の1つである、全面的価格賠償とはどういうものでしょうか?

 共有不動産を共有者1人だけの単独所有として、取得した者は他の共有者に持ち分割合に応じて適正価格を支払う、というものです。取得希望者がいることが前提となります。また、複数の取得希望者がいる場合にはどちらに取得させることが適正か、を裁判所が判断していくこととなります(利用関係・これまでの経緯・各人の支払能力などを総合的に考慮して判断されます。)。
裁判所が定める判断枠組みは以下の通りです。

① 共有物の性質・形状、
② 共有関係の発生原因、
③ 共有者の数及び持ち分の割合、
④ 共有者の利用状況及び分割された場合の経済的価値、
⑤ 共有者の希望及びその合理性
これらを総合的に考慮して特定のものに取得させるのが妥当か判断します。

更に、上の視点に加え、⑥価格が適正に評価され、⑦取得希望者に支払能力があり、⑧共有者間で実質的公平を害さない、という場合には全面的価格賠償が認められます。

これは民法には規定が無いのですが、判例において認められた手法であり、今日では、解決方法として、とてもポピュラーなものとなっています。法律的には、取得希望者が裁判所の力を借りて強制的に他の共有持ち分者から適正価格で買い取る、ということといえるでしょう。

Q 裁判所においてはどの方法を採用するのでしょうか?

 勿論ケースバイケースですが、一般的には①全面的価格賠償→②現物分割→③換価分割の順で判断していきます。①全面的価格賠償がうまく機能しない場合には、現物分割を検討します。そして、②現物分割も採用できない場合には③換価分割が採用されます。即ち、競売による売却は、最後の手段となるといえます。

Q 共有持分の全面的価格賠償の額はどのように算定されるでしょうか?

 共有持分の売却価額の算定は、まず共有不動産全体を評価し、共有持分割合を乗じて共有持分の価額を算定する必要があります。もっとも、「共有」であるが故に当然にその評価が減じられるといわれています。これを共有減価といいます。
共有状態の不動産の場合,単独所有の不動産と比べて,どうしても廉価とならざるを得ません。自分一人で自由に管理・処分出来るわけでは無いからです。そこで、本来あるべき適正価格から25パーセントから30パーセント程度、減額補正がなされることが通常です。
もっとも全面的価格賠償の際に、取得希望者が他の共有持ち分者に払う額を算定する場合には、現在の裁判所においては、この共有減価の考えは適用されていません。取得希望者は結果的に単独取得する事が出来るためであり、仮に、共有減価の考えを取り入れるとすると、他の共有持ち分者に不公平になってしまうからです。

Q 共有不動産を1人が賃貸し、賃料収入を得ているがそれを一人で取得している場合、賃料の相応額を請求出来ないでしょうか?

A 共有者の1名が賃料を他の共有者に渡していない時、過去の分も将来の分も適正賃料に共有持ち分割合を乗じた分を相手に請求することが認められます。不当利得返還請求或いは、不法行為に基づく損害賠償請求という形で請求します。
もっとも、過去の分は、場合によっては3年・5年(或いは10年)の消滅時効にかかってしまうことがありますので急いで取りかかる必要があります(法律構成により時効期間は異なります。)。
適正賃料額とは一般的には現時点で賃貸している賃料額となるでしょう。これが分からない場合には近隣の同様の不動産の賃料相場を調べることで足りるでしょう。仮に賃貸している他の共有者が明らかにしない場合であっても問題は無いでしょう。

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