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経験豊富な弁護士集団による相続問題のための法律相談は中村・安藤法律事務所

海外在住者の遺産相続については日本で生活する場合の遺産相続と異なり若干気を付ける必要があります。

⑴ 適用法令

まず、被相続人が日本人で日本に生活していた場合には相続に関しては日本の民法が適用されますので、海外在住者が生活する国の法律が適用されるわけではないということとなります。あくまで日本の民法を理解すれば足りることとなります。

⑵ 他の相続人からの「何も面倒みてない・何もしていない」との主張

長期間海外に生活している場合、どうしても両親の面倒を見ることは困難となり、葬儀などの段取り・手配・遂行一切を他の相続人が行うことが通常でしょう。
この様な時に他の相続人からは、「何も面倒みてない」「一切私たちに任せっきりだった」と主張され、遺産分割でも不利益を被ることがあるのでしょうか?

他の相続人(典型的には親の面倒を見ていた他の兄弟姉妹など、)のこの様な主張は、法律的には寄与分の主張として構成されるでしょう。通常の扶養の範囲を超えて一人の相続人が被相続人の介護・療養の世話などを行った場合には、その相続人には「寄与分」があると認められえます。

もっとも、そのような主張が認められるために、かなりの程度の介護・療養の世話をしたと評価される必要があります(被相続人が施設に暮らしていたり、完全介護で入院しているような状況ではまず認められないでしょう。)。
即ち、ごく例外的な場合のみそのような「寄与分」の主張は認められ得るでしょう。言い換えれば、例外的な場合を除き、相続人の一人が外国に生活しておりその人が被相続人の介護や世話などを行えなかったとしても、これにより遺産分割において不利益を被ることはあまりないと言えるでしょう。特別な事情がない限り、他の相続人のそのような主張は法律的には意味を持たないことが多いです。

⑶ 遺産分割の協議について

相続人が海外に永住するなり長期間住んでいたとしてもそのことは前述の「寄与分の主張」以外には問題とならず通常の遺産分割と同じです。
もっとも、被相続人の通帳の管理・金銭管理などについては、海外に生活しているため、その内情は殆どわからないのが一般的でしょう。従って、被相続人の預金から不明瞭な金銭の流出がないかをチェックする必要が出てきます。わずかな額であればあまり目くじらを立てる必要もないでしょうが、額によっては看過できないことがあるでしょう。

この作業は思いのほか煩雑ですので、海外に居住しながら行うことは難儀です。信頼のおける弁護士に委任していくのが合理的といえます。

⑷ 登記手続き等について

遺産分割が無事に成立した場合には預貯金の引き下ろしや不動産の名義の変更などの手続きをすることとなりますが、海外在住者の場合、印鑑登録証明書が取れないこととなりますが、その場合はこれに代わる書面として、日本の領事が作成した署名証明を添付することで足りるとされています。さらには、居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合など、領事が作成した署名証明を取得することが困難な場合、外国の公証人が作成した署名証明を用いることもできます。

⑸ 相続税の申告について

海外居住者であっても日本の被相続人から相続した場合相続税の申告が必要となります(相続財産の額によっては申告が不要となるのは通常の場合と同様です。)。この場合は日本の税務署との窓口となる「遺産管理人」を選定する必要があります。通常は他の兄弟姉妹らが、遺産管理人になることが多いのですが、遺産相続で紛糾し感情的しこりが残る場合も少なからずあります。そのような場合には、弁護士事務所等が遺産管理人として日本の税務署の窓口になることもありますので、お気軽にお問い合わせください。

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