遺産分割協議書の作成
遺産分割を成立させるためには法律的には書面になっている必要はありませんが(遺言書においては法律的には書面になっている必要があります。)、しかし、後日の紛争を回避して内容を明確化するためにも、書面にしておく必要があるでしょう。
遺産分割は、遺言がある場合には必要ありません(遺留分侵害の問題を除けば、遺言書通りに相続財産は分けられることとなります。)が、それが無い場合、相続人全員による協議に基づいて合意を成立させる必要があります。なお、遺産分割協議書には必ずしも判子が押される必要はありません(自筆遺言書においては判子が押される必要があります。)。もっとも登記をしたり預金を下ろしたりするような場合を想定するに実印が押されていることが望ましくなります。以下の通りこの他にも留意点があります。
①相続人全員の同意が必要
被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍を確認して相続人を正確に把握する必要があります。
・認知をしている子供がいるような場合には注意が必要となります。
・未成年の子供が法定相続人となる場合には若干の注意が必要です。即ち、未成年の子供は法定代理人である親が遺産分割協議を行う必要があります。もっとも、法定相続人となるべき親も、同様に法定相続人となる場合には、当該親と未成年の子供の利害が対立することとなりますので、この様な場合には家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります(民法826条)ので注意が必要です。
②相続人全員の署名・捺印が必要
遺産分割協議書自体は法律的には書面化する必要はありませんが、前述の通り相続人全員の署名・押印をしておくことが重要となります。
③遺産を出来るだけ全て分割しておくと良いでしょう。
遺産分割協議自体には法律で定められた方式は特にありません。即ち、相続財産の一部についてのみとりあえず分割をしておき、残りは後日、分割をする、というやり方でも大丈夫です。もっとも、出来るだけ1回で終わらせるべく全体についての分割をしておく方が望ましいでしょう。
なお、被相続人の負債(借金や未払い金)については、遺産分割協議において相続人間でその負担を取り決めることは有効でしょう。しかし、当該負債の債権者に対しては、法定相続分通りに分割された分を請求されうる、ということにも注意が必要です。例えば、被相続人である父親の相続財産が預金5000万円と借入金2000万円であり、相続人が兄妹で2分の1ずつであるような場合には一番簡単なのはそれぞれが預金を2500万円ずつ相続し、借入金を1000万円ずつ負担する、という形でしょう(1人あたりの実質的な取得額は1500万円)。しかし、兄が預金を3500万円相続しその代わりに借入金を全額2000万円負担する、妹は預金を1500万円のみ相続し借入金を負担しない、という形での遺産分割をすることがあります。
後者の例の場合、兄が債権者に返済をしない場合、債権者は前述の遺産分割協議にかかわらず妹に2000万円の2分の1にあたる1000万円の請求が出来てしまうので注意が必要です。
遺産分割協議の対象から漏れた相続財産があった場合にはそれを誰が取得するかも明記しておくでしょう(一般には法定相続分通りに取得するというか内容の条項が多いでしょう。)。