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経験豊富な弁護士集団による相続問題のための法律相談は中村・安藤法律事務所

不動産の賃貸借に関しては、被相続人が①建物を賃借している場合②建物を賃貸している場合③土地を賃借している場合④土地を賃貸している場合、の4つがあります。

1 被相続人が建物を賃借している場合について

⑴ 被相続人が建物を普通賃貸借に基づいて賃借している場合(多くの場合がこれに当たるでしょう。)には、その普通賃借権も相続の対象となり、大家に対して、普通賃借権を相続したことを主張することが出来ます。大家の承諾は不要となります。もちろん、建物の使用の目的(居住用か、店舗として利用か、といったこと)については被相続人が亡くなる以前と同じ条件となります(賃料や賃借期間も従前のとおりです。)。

⑵ 被相続人が建物を定期賃貸借に基づいて賃借している場合も⑴と同様となります。

⑶ 被相続人が終身建物賃貸借している場合には、被相続人である契約者が亡くなった場合には賃借権が相続されることはありませんので注意が必要です(高齢者法52条)。
終身建物賃貸借とは、入居者が60歳以上であること、入居者本人が単身であるか同居者が配偶者もしくは60歳以上の親族であること、を条件に、契約により当該入居者が死亡するまで住み続けることを可能とする契約です。
普通借家権の場合は、賃貸人側の事情により場合によっては退去を余儀なくされますが、終身建物賃貸借の場合にはこのような危険はなく、亡くなるまで住み続けることが出来る、という契約です。他方、当該入居者が亡くなった場合には相続の対象とはなりません。
もっとも、当該入居者が亡くなった後であっても、同居していた配偶者もしくは60歳以上の親族は入居者の死亡を知った日から1カ月以内に賃貸人に申し出ることで引き続きの継続利用が可能となります。

2 被相続人が建物を賃貸している場合

⑴ 当該建物は相続の対象となります。そして、賃借人を退去させることはできないので賃借人付きの建物として相続に対象となります。

⑵ 賃料の帰属について
被相続人が亡くなってから、遺産分割決まり当該不動産の帰属が決まるまで1年なり2年なり期間を要する場合があります。遺産分割が決まるまでの間、賃借人からの賃料はだれに帰属することとなるのでしょうか?

① 最終的に遺産分割により当該不動産を取得することとなった相続人が相続開始時点から取得することとなるのか、②それとも、遺産分割が成立するまでの間の賃料は法定相続人全員で法定相続分に基づいて取得するのでしょうか?

これまで争いがありましたが、最高裁判所は②の考えを採用しました。即ち、遺産分割が成立するまでは法定相続人全員で取得することとなりました。


⑶ 敷金返還債務について
賃借人に返還するべき敷金債務も相続の対象となるので、誰が敷金返還債務を相続するかを取り決める必要があるでしょう。なお、敷金返還債務については、法律的には、遺産分割の対象とはならず、当然に法定相続人間で法定相続分に応じて負担することとなりますが、現実には当該建物を相続する人が引き継ぐ例が殆どでしょう。

3 被相続人が土地を賃借している場合

被相続人の土地の賃借人たる地位は相続に対象となります(1で述べた通り、もともとの賃貸借の条件がそのまま引き継がれます。)。そして、相続するにあたり、賃貸人の承諾は不要となります。
特に、建物所有目的で土地を借りている場合(借地権)には、相当な財産的価値を有するので相続をした方が有利という場合が殆どでしょう。

相続人が借地権を利用する必要がある場合は勿論ですが、仮にその様な必要がない場合であっても借地権を売ることは可能ですので、売買によって借地権を換価することが可能となります。もちろん借地権を譲渡するには地主の承諾が必要ですが、仮にこれを得られない場合であっても裁判所に地主の承諾に代わる許可を申し立てることにより可能となります。地主に特別な不利益ないと解される場合には許可されることとなり、そして、その場合には承諾料相当額として、一般的には更地価格の5%から10%程度の金銭の支払いを要することとなります。

他方、駐車場を借りているような場合には必ずしも財産的価値は高いとは言えず、無理に相続する必要は乏しいと言えるでしょう。

4 被相続人が土地を賃貸している場合

被相続人が土地を賃貸している場合には、賃借人を追い出すことはできず賃借人付きの土地が相続の対象となります。
この場合にもその地代の扱いや敷金返還債務も相続の対象となることは2で述べた通りです。

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