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遺留分侵害額請求に関連して各種財産の評価について

遺留分は、兄妹姉妹を除く法定相続人に最低限、保障された相続分です。自己の遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分を侵害している人に金銭の支払いを請求することができます(従前は不動産持ち分なり現物での請求もありましたが現行法は、金銭請求となります。)。
遺留分侵害請求として幾ら支払う必要があるかは相続時に存在した相続財産の額、生前贈与の額・時期などを検討して行く必要があります。
比較的難しいのは、①収益不動産の評価、②借地権の評価、③非上場株式の評価でしょう。

①収益不動産の評価としては、更地価格に建物価格を合算することにより算出するやり方もありますが、それよりも収益性に着目して評価をする方が合理的といえる場合が多いでしょう(それらを混合して算出することもあります。)。
収益性に着目して計算すると概略以下の様な算出があります(あくまで大雑把な把握です。)。
当該収益物件が都心の一等地で比較的新しい物件の時は、年間の賃料総額の15倍程度から25倍程度
当該収益物件が郊外の住宅街で築20年程度の物件の時は、年間の賃料総額の7倍程度から12倍程度
当該収益物件が郊外の住宅街で比較的古い物件の時は、年間の賃料総額の5倍程度から8倍程度

②借地権の評価は、更地価格に借地権割合(税務署発行の路線価表に記載されています。)を乗じた額を基本としつつ、借地権の経過期間や残存期間を考慮していくこととなるでしょう。借地権は所有権と異なり永久に土地を使えるわけではなくいずれは地主に返還する必要があるものですので、後どの程度の期間利用できるのか、という視点も重要となります(その意味では権利金を入れているか、その額は幾らか、ということも一応の視点となります。)。

③非上場株式の評価は、結構難しい問題です。被相続人である父親が経営していた中小企業を長男が引き継いで経営することは決して珍しいことではありません。そして、被相続人である父親が所有していた当該中小企業の株式を長男が相続する場合にその評価が問題となります。
相続税の申告書では有る程度機械的に算出されるのですが、遺留分の侵害額の計算と相続税の申告での評価は異なりますので、相続税の申告での評価にとらわれる必要はありません。大雑把な考え方としては①純資産額を基準に算出する方法、②過去の配当に着目する方法、③現在・将来の収益性に着目して算出方法(収益還元方法)等があり、これらを組み合わせて算出することとなるでしょう。

この点について正面から触れた裁判例は決して多くないのですが、単純に純資産額を基準に算出した例もあります。なお、会社の規模・内容(専ら資産管理の会社か)・株数の割合(支配権を獲得するほどの割合か、それとも僅少か)等も影響してきます。
純資産額を基準とすることは、わかりやすくある意味明快・合理的なようにも思えるのですが、会社の解体・清算を前提とする方法であるのでこの点では問題を含む方法ともいえます。

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