A: 海外に住んでいる方が、日本国内に不動産(例えば実家の土地や建物)を所有したまま亡くなった場合でも、その不動産は日本で相続手続きを行う必要があります。基本的な流れは通常の相続と同様に、遺言書の確認、相続人の確定、遺産分割協議、そして不動産の名義変更(相続登記)の申請という手順になります。ただし、被相続人(亡くなった方)が日本国外に居住していたことから生じる特有の注意点や追加手続きがあります。
どの国の法律が適用されるかの確認: 被相続人が日本国籍であれば、その相続には日本法が適用され、誰が相続人になるか、また、相続分も日本の民法に従って決まります。
不動産の相続登記(名義変更)
日本にある不動産を相続した場合、法務局で名義変更の登記申請を行います。この相続登記は2024年より義務化されており、相続開始を知ってから3年以内に申請しないと過料の対象となり得ます。海外在住者だけで相続登記を完了させることも可能ですが、必要書類を揃えて日本の法務局に提出する手続きを取る必要があります。申請自体は相続人自身でもできますが、専門知識が求められるため司法書士に依頼するのが一般的です。依頼が難しい場合でも、法務局宛に郵送で申請することもできます。
相続登記の必要書類
海外在住者が関わる不動産相続では、提出すべき書類も国内相続と少し異なります。主な必要書類は次の通りです(ケースに応じて追加書類もあります)。
被相続人に関する書類
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本および除籍謄本・改製原戸籍(被相続人が日本人の場合)。被相続人が日本で住民登録をしていた場合は死亡時の住民票除票または戸籍の附票も取得します。
相続人に関する書類
各相続人の戸籍謄本(相続人が日本国籍の場合)。相続人が海外在住日本人で住民票がない場合は、在留証明書(海外住所を証明する書類)を在外公館で取得します。相続人が外国籍の場合は、日本の戸籍に代わるものとして、その相続人の出生証明書や婚姻証明書、家族関係証明書など(故人との関係性が分かる公的書類)を準備します。必要に応じて宣誓供述書(Affidavit)を現地の公証人や日本大使館で作成することもあります。いずれの場合も外国語書類には日本語訳とアポスティーユ(または領事認証)が必要です。これにより国外発行の書類が日本でも正式な証明書として認められます。
不動産・手続き関係書類
相続不動産の固定資産評価証明書(不動産の評価額を証明する書類。物件所在地の市区町村役場で取得)。相続人全員の合意内容を記した遺産分割協議書(後述の署名証明書等を添付)。そして法務局に提出する相続登記申請書などです。申請書には不動産の所在や評価額、相続人全員の氏名・住所等を記載します。登記申請時には登録免許税(不動産評価額の0.4%が原則)がかかるため、その税額分の収入印紙も用意します。
補足
海外在住の相続人には日本の住民票がないため、登記申請の際には住所証明書として在外公館発行の在留証明書を添付します。また、遺産分割協議書には国内相続人は実印押印と印鑑証明書を付けますが、海外相続人は署名と署名証明書を綴り合わせて割印する形で提出します。法務局ではそれで正式な協議書と認めてくれます。
手続き上の注意点
被相続人が海外在住だったケースでは、日本国内に比べて手続きに時間と手間がかかります。例えば、被相続人が亡くなった国の死亡証明書を取り寄せ、日本語に翻訳して法務局に提出する必要があります。死亡地が日本国外の場合、日本の役所には死亡の届出が出ていないケースもあるため、戸籍上は「死亡」が記載されていないことがあります。その場合でも相続登記申請は可能ですが、代わりに外国の死亡証明書+翻訳文で死亡の事実を証明します。提出書類について不明な点があれば、事前に不動産所在地を管轄する法務局に問い合わせて確認すると安心です。各国で発行される書類の形式や取得方法は様々ですので、「○○の書類が用意できない場合は他に何で代用できるか」を専門家に相談しながら進めましょう。例えば「出生証明書が存在しない国では家族証明書で代用する」といったケースもあります。
税金や費用面の注意
不動産を相続すると、その評価額に応じて日本の相続税が課される場合があります(基礎控除額を超える場合)。海外在住者だからといって相続税が自動的に免除されることはなく、課税対象なら日本で申告・納税する義務があります(詳細は次のQ3で解説します)。その際、海外在住の相続人は日本に納税管理人を指定して税務手続きを行う必要があります。また、不動産を相続すれば今後その不動産にかかる固定資産税等の維持費も負担することになります。遠方にある不動産をこのまま所有し続けるのか、売却や現地での管理をどうするか、といった点も含めて検討が必要です。相続登記が終わった後、海外から日本の不動産を管理するのが難しい場合は、信頼できる管理業者に委託したり、思い切って売却して現金化する選択肢もあります(一旦相続した不動産を売却する場合でも売却に関して所得税がかかります。)。
まとめ
海外在住者が日本に残した不動産の相続手続きは、通常の相続手続きに加えて国際間の書類のやり取りや法制度の違いに対応する必要があります。相続登記は義務であることを念頭に、必要書類を早めに集めて確実に名義変更を済ませましょう。書類の不備や遅延を避けるため、途中で不明点が出たら司法書士など専門家に相談することをおすすめします。適切に進めれば、海外からでも日本の不動産相続を完了させることができます。



